アニマルウェルフェア鶏卵とは?基本的な考え方と重要性

毎日の食卓に欠かせない卵。日本人は世界で3番目に卵を多く消費する国民だということをご存知でしょうか?

そんな身近な食材である卵ですが、最近「アニマルウェルフェア鶏卵」という言葉を耳にすることが増えてきました。アニマルウェルフェアとは、「動物福祉」と訳され、人間と共に生きる動物たちが不必要なストレスなく健康に過ごせるよう、適切な飼育環境を提供することを指します。

鶏が快適に暮らせる環境で生産された卵は、単に動物に優しいだけでなく、私たち人間にとっても様々なメリットがあるのです。

アニマルウェルフェアの基本原則は「5つの自由」です。これは、空腹・渇きからの自由、不快からの自由、痛み・外傷・病気からの自由、本来の行動がとれる自由、そして恐怖・抑圧からの自由を指します。

これらの自由は、動物が生きていく上で最低限必要な条件であり、動物が健康で幸福に生活するために欠かせないものなのです。


鶏の飼育方法の違いを知る〜ケージ飼いから放し飼いまで

卵を選ぶ際に重要なのは、その卵がどのような環境で飼育された鶏から産まれたかを知ることです。

日本のスーパーで見かける卵の多くは、「ケージ飼い」と呼ばれる方法で飼育された鶏から産まれたものです。この方法では、鶏は小さなケージに閉じ込められ、自由に動き回ることができません。一方で、糞尿が区分され衛生が保たれやすいことや、鶏同士のつつきによるストレスやケガの防止などのメリットもあります。

しかし、鶏本来の行動が著しく制限されるため、アニマルウェルフェアの観点からは問題があるとされています。鶏は本来、砂浴びをしたり、止まり木に止まったり、巣を作ったりする行動を持っていますが、ケージ内ではそれらの行動ができないのです。

これに対して「平飼い」は、鶏舎内または屋外で鶏が床面や地面を自由に動き回れるようにする飼育方法です。さらに「放し飼い」は、平飼いのうち日中の過半を屋外で飼育する方法を指します。

どうですか?平飼いや放し飼いの方が、鶏にとって自然な環境で過ごせると感じませんか?

ただし、飼育方法にはそれぞれ長所と短所があります。平飼いや放し飼いでは、鶏の行動の制限は少ない一方、鶏同士のケンカによるストレスやケガが増えたり、野生動物からの感染症リスクが高まったりする場合もあるのです。

また、飼育密度も重要な要素です。「平飼い」と表示されていても、実際の飼育密度は農場によって大きく異なります。2014年に行われた調査では、平飼い卵の41.5%が1羽あたり1000cm²以下という密度で飼育されており、さらに15.1%は370cm²という超過密状態だったことが明らかになっています。


認証マークの見方〜信頼できる基準を知る

アニマルウェルフェアに配慮した卵を選ぶ際、パッケージに表示された認証マークは重要な目印になります。でも、どの表示が信頼できるのでしょうか?

日本では、「鶏卵の表示に関する公正競争規約」により、卵のパッケージに「平飼い」と表示するためには、「鶏舎内または屋外で鶏が自由に地面を運動できるように飼育」することが必要とされています。

「放し飼い卵」と表示するには、「平飼いのうち、日中の過半を屋外において飼育」することが求められます。さらに「放し飼い(特定飼育卵)」と記載されているものは、120日齢以降、1㎡あたり5羽以下という具体的な飼育密度基準を満たしています。

最も厳格な基準を持つのが「有機JAS」認証です。この認証を受けた卵は、有機畜産物の日本農林規格により、1羽あたり0.15㎡(1500cm²)以上の飼育面積が確保され、適切な止まり木などの休息場所が提供されています。また、週に2回以上は野外の飼育場に出すことが求められ、バタリーケージでの飼育は認められていません。

一方、海外には「ANIMAL WELFARE APPROVED」などの認証があり、放牧飼育に加えてクチバシの切断や強制換羽を禁止するなど、より厳格な基準を設けています。

あなたは今まで、卵を選ぶ際にこうした表示を確認したことがありますか?


アニマルウェルフェア鶏卵を選ぶ際のポイント

アニマルウェルフェアに配慮した卵を選ぶ際には、以下のポイントに注目するとよいでしょう。

  • 「平飼い」「放し飼い」「有機JAS」の表記があるものを選ぶ
  • 飼育密度が広いものを選ぶ(特に「放し飼い(特定飼育卵)」や「有機JAS」)
  • 可能であれば農場の実際の様子(写真や動画)を確認する
  • 巣、砂場、止まり木などの設備が整っているか確認する
  • デビーク(クチバシの切断)や強制換羽を行っていないか確認する

ただし、「平飼い」と表示されていても、それだけで鶏が幸せに飼育されているとは限りません。平飼いの中にも過密飼育の場合があるため、可能であれば飼育密度や具体的な飼育環境についても確認することが重要です。

欧米ではアニマルウェルフェアへの意識が高く、多くの国でケージフリー(ケージを使わない飼育)への移行が進んでいます。特に英国は、アニマルウェルフェア関連の法整備が進んでおり、動物愛護団体の活動も活発で、世界で最もアニマルウェルフェアが進んだ国の一つとして知られています。

日本でも徐々にアニマルウェルフェアへの関心が高まっていますが、まだ欧米に比べると認知度は低いのが現状です。

空腹や不快から解放され、本来の行動ができる環境で育った鶏の卵。そんな卵を選ぶことは、動物たちの幸せを支援するだけでなく、私たち人間の食の安全性向上にもつながるのです。


アニマルウェルフェア鶏卵のメリット〜人と動物と環境に優しい選択

アニマルウェルフェアに配慮した環境で育った鶏の卵を選ぶことは、単に動物に優しいだけではありません。実は私たち人間にとっても、そして環境にとっても多くのメリットがあるのです。

まず、動物の健康は食の安全性に直結します。ストレスの少ない環境で育った鶏は健康的で、その卵も栄養価が高く、味も良いとされています。また、健康な鶏は抗生物質などの薬の使用量を減らすことができるため、薬剤耐性菌の発生を抑制する効果も期待できます。

日本には独特の気候風土や卵の生食文化があります。「卵かけご飯」など、生の卵を食べるという世界的に珍しい食文化を支えているのは、徹底した衛生管理です。アニマルウェルフェアに配慮しつつ、この日本独特の食文化に合った卵の生産方法を考えていくことが重要でしょう。

生産者側にとっても、アニマルウェルフェア認証は信頼性やブランド価値の向上につながります。動物のことを真摯に考え向き合うことで、従業員のプロ意識も高まり、畜産業はさらにやりがいのある仕事となるでしょう。

企業イメージの向上は、優秀な人材確保にも寄与します。実際、欧米では「BBFAW(Business Benchmark on Farm Animal Welfare)」というアニマルウェルフェアへの取り組みを評価するランキングが存在し、ESG投資の指標としても注目されています。

あなたは毎日何気なく食べている卵が、どんな環境で育った鶏から産まれたものか考えたことはありますか?

一つの卵を選ぶ行為が、動物たちの生活環境を変え、私たちの食の安全を高め、地球環境にも優しい選択につながるのです。


日本におけるアニマルウェルフェアの現状と今後の展望

日本では、アニマルウェルフェアの認知度はまだ欧米に比べて低いのが現状です。しかし、徐々に関心は高まりつつあります。

日本政府も国際獣疫事務局(WOAH、旧OIE)のアニマルウェルフェアコードを参考に、「採卵鶏の飼養管理に関する技術的な指針」を策定しています。この指針では、採卵鶏にとっての「5つの自由」に基づく飼育管理方法が具体的に示されています。

最も大切なことは、鶏舎の構造や設備の状況だけでなく、採卵鶏の健康を第一に考えた日々の観察や丁寧な取り扱いなどの適切な飼育管理を行うことです。

日本の気候風土や限られた国土面積を考慮すると、欧米と全く同じ飼育方法が最適とは限りません。日本においても、気候や土地面積などの環境要因や固有の食文化などを考慮した、よりよい飼育方法の研究が進められています。

現状では、日本の養鶏場の9割以上でケージ飼いが採用されています。アニマルウェルフェアの「5つの自由」をより高めると、人件費や飼育設備の費用などが増加し、卵の価格は高くなります。一般的なケージ飼いと比較して、ケージフリー飼育の卵は約2倍の価格になることも試算されています。

しかし、アニマルウェルフェアをよく理解した上で、考えて選択することが大切です。今後、どのような育て方をされているのかが示された上で、卵の購入を選択できる社会になることが望まれます。

株式会社アニマルウェルフェアは、日本初のアニマルウェルフェア専門企業として、WOAH(国際獣疫事務局)のアニマルウェルフェアコードを準拠すると共に、日本の畜産環境に合わせた「自社基準」を作成し、AWのISO認証の付与を目指しています。

同社は、農場・畜産事業者向けの「AW審査認定」や、食品メーカー向けの「AW認定商品開発支援」、一般消費者向けの「AW商品販売オンラインショップ」の運営など、多岐にわたるサービスを提供しています。

アニマルウェルフェアを促進することで、「人」「動物」「地球環境」が健康で笑顔になることを目指す取り組みは、今後ますます重要になってくるでしょう。


まとめ:賢い消費者として選ぶアニマルウェルフェア鶏卵

アニマルウェルフェア鶏卵を選ぶことは、単なる消費行動を超えた意識的な選択です。

卵を選ぶ際は、パッケージの「平飼い」「放し飼い」「有機JAS」などの表記に注目しましょう。これらの表記がない場合は、ほぼケージ飼いの卵だと考えられます。また、「放し飼い(特定飼育卵)」や「有機JAS」は、より具体的な飼育密度基準が定められており、より信頼性が高いと言えます。

ただし、認証マークだけでなく、可能であれば実際の飼育環境や飼育密度、鶏の健康状態なども確認することが理想的です。

アニマルウェルフェアに配慮した卵は一般的に価格が高くなりますが、その背景には人件費や設備投資など、鶏の福祉を向上させるためのコストがあります。価格の高さは、動物と環境への配慮の証でもあるのです。

私たち一人ひとりの選択が、動物たちの生活環境を変え、より持続可能な食のあり方を支えることになります。賢い消費者として、アニマルウェルフェアについて理解を深め、意識的な選択をしていきましょう。

アニマルウェルフェアを促進することは、動物だけでなく、私たち人間の健康や地球環境にも良い影響をもたらします。「人」「動物」「地球環境」が共に笑顔になれる社会を目指して、まずは毎日の食卓に並ぶ卵から見直してみませんか? アニマルウェルフェアに関するより詳しい情報や認証サービスについては、株式会社アニマルウェルフェアのウェブサイトをご覧ください。人のため、地球のため、そして動物たちのために、私たちができることから始めてみましょう。